Interview

化学反応に導かれる先へ。メディアミックスプロジェクト『Toxic-a-Holic』プロデューサーインタビュー

カルチュア・エンタテインメント グループのアース・スター エンターテイメント(以下、ESE)と株式会社KADOKAWAがタッグを組んだメディアミックスプロジェクト『Toxic-a-Holic』が、2024年10月より始動しました。
「毒物男子」と呼ばれる毒の擬人化と「謎解き」をテーマにした本プロジェクト。始動後からボイスドラマを中心としたコンテンツを軸に、オリジナリティ溢れる世界観やキャラクターを存分に楽しめるさまざまな企画を展開しています。
『Toxic-a-Holic』のプロデューサーである冲田 ヨウさんに、プロジェクト発足の経緯やプロジェクトに対する思いについて伺いました。


『Toxic-a-Holic』

「毒物男子を信じるな。やつらは全員人殺しで、有害な存在だ──」
「毒物男子×謎」をテーマにした侵食型プロジェクト


『Toxic-a-Holic』とはどういうプロジェクトですか?

『Toxic-a-Holic(トキシカホリック、以下トキホリ)』は、「毒物男子×謎」をテーマにした侵食型プロジェクトとして、YouTubeやX(旧Twitter)などSNSを中心に展開しているメディアミックスプロジェクトです。「女性向けコンテンツ」として、「毒物の擬人化」というキャッチーなフックに「謎」を絡め、深く長く楽しんでいただけるコンテンツに仕立てています。

「謎」とは何を指すかについてですが、現在『トキホリ』の公式YouTubeでは、近年人気のYouTuberやVTuberのように、キャラクターたちが楽しく賑やかに“ワチャワチャ”活動している様子を発信しています。実はこの動画内に「暗号」が隠されており、それを見つけ、解き、公式サイトなどの所定の場所で解答すると、「過去に起きたテロ事件に、毒物男子たちが関与していたのではないか?」などの作品の根幹に迫る情報が手に入ります。ライトにキャラや関係性を楽しんでいただけるところから始まり、公式サイトやXで世界観や過去を見せ、ファンをより深い物語へと誘う、この2段構えの形を本プロジェクトでは「謎」と呼んでいます。
散りばめた情報の交換・交流の場としては、現在はX(旧Twitter)の「コミュニティ」機能を活用しています。プロジェクトが始まってからまだ数ヶ月ですが、すでに900人以上の方が集まってくださり、「謎」の考察を楽しむ動きが活発になってきています。今後は、ファン同士が交流するコミュニティとしてファンクラブも設立したいですね。

『トキホリ』が始動し7ヵ月が経過しましたが、ユーザーの反応などはどのように捉えていますか

ありがたいことに、「毒物男子」というキャッチーなコンセプトや豪華なキャスト陣により、情報解禁時にYahoo!ニュースのリアルタイム検索で『トキホリ』が2位を記録するなど、初動で大きな注目を集めることができました。また、複数のメディアにご協力いただき、事前に広く情報を届けられたことも、話題化の大きな要因の1つになりました。
グッズについては、11月にAGF(アニメイトガールズフェスティバル)で、その後FAN+Lifeでも販売しました。特にFAN+Lifeにて想像以上にご購入があり、嬉しい反響でした。アイテム数もまだ少ないのですが、キャラクターのアクスタを色々な場所に一緒に連れて行き、その様子をSNSなどに投稿してくださる方も多く、熱量の高いファンに愛していただいているのだなと喜びを噛み締めています。

私は、謎解きやミステリー、ディストピアなど近未来SF的な世界観が好きで、そういったコンテンツを作りたいと考えていました。しかし、女性向けにはこのようなジャンルでの前例があまりなく、女性ファンに向けたSF・ディストピア系の作品として成り立たせるために、どのあたりをチューニングするべきかが課題となっていました。

そこで意識したのが、「キャッチーさ」と「とっつきやすさ」です。
SFというテーマだけではキャッチーさが足りないと悩んでいた時に「毒物の擬人化」を思いつきました。擬人化コンテンツにはヒット作品が多数あるので、親しみやすさを持ってもらえるのではないか。また、「既視感」をうまく活かすことで、より広い層にアプローチし、裾野を広げられるのではと考えたのです。それに加え、「謎解き」要素も絡めることで、ストーリー性やインタラクティブ性をより高めることができ、奥行きのある世界観を作り出せると感じました。
また、設定上は正式な名称があっても「機関」などとシンプルな言葉に統一するなど「とっつきやすさ」を出す工夫もしています。SF・ディストピア系らしく世界観をかなり作り込んでいるのですが、最初から全てを提示せず、まずは「興味を持ってもらうこと」を優先しています。

本プロジェクトの企画に至るまでの経緯について教えて下さい

これまでもコンテンツ制作に関わってきたのですが、プロデューサーとしての経験はなく、0から1を生み出すことにチャレンジしたいと考え、「メディアミックスプロデューサー」を募集していたESEに入社しました。新しいIPの開発に力を入れていて、社員に挑戦の機会を与えてくれる環境と、面接で出会った方々の暖かい人柄や活気溢れる会社の雰囲気に魅力を感じたからです。
入社直後から「積極的に企画を出して、やっていっていいよ」と言っていただけたので、ESEのカルチャーやノウハウを学ぶために『ウタヒメドリーム』のお手伝いをしながら、並行して企画を作っていきました。『トキホリ』の企画書を提出したのは入社から約4ヶ月後の11月。それからも、他の業務と並行しながら企画開発を進め、ちょうど1年くらいで仕上げました。
実は、面接時に「いずれ女性向けレーベルを立ち上げたい」というお話していたのですが、入社後、幸運にもそのチャンスをいただけ、新しいメディアミックスブランド『EARTH STAR SPICA(アース・スター スピカ)』を立ち上げることもできました。

『EARTH STAR SPICA』
メディアミックスコンテンツの原作を生み出す出版社、株式会社アース・スター エンターテイメントから生まれた新ブランド。

「あなたの明日を照らす一等星」をコンセプトに、『補講男子』をはじめとするメディアミックス作品で、ときめきをお届けします。

『トキホリ』はKADOKAWAとの共同プロジェクトですが、どのような体制で進めていく予定なのでしょうか

今回、共同でプロジェクトを進めていただくこととなったKADOKAWAさんは、メディアミックスを広げるという点でも強い力を持っているので、その力をお借りしつつ、お互いにとってプラスになる形でプロジェクトを展開していきたいと考えています。

また、本プロジェクトはKADOKAWAさんの他に多くのパートナーにご支援いただいています。
例えば、NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパンさんに協力いただき、新進気鋭のボカロPをはじめとする数々のクリエイターの方々から楽曲をご提供いただいています。キャラクターごとの性格や個性を説明し、「こういう感じの楽曲にしてほしい」という希望をお伝えし、その後上がってきたものに対し必要に応じて修正のやり取りを行う形で制作を進めています。ただ、音楽は専門性の高い分野ですし、私自身音楽は好きなのですがあくまでもユーザー目線でしか判断できないので、プロであるNBCのディレクターさんが最適だと思う形に仕上げてもらうのが一番だと考え、キャラクターや物語の方向性に沿っているかどうかだけお伝えし、それ以外はほとんどお任せしています。

2月に『トキホリ』初のキャラソンが公開されましたね

2月に公開したC.B.のキャラクターソング(以下キャラソン)はとてもキャッチー楽曲となっており、ビジュアルも若年層に刺さるよう意識し整え、同時期にTikTokもはじめました。よって、これまで『トキホリ』を知らなかった方にもアプローチできている感触があります。

新曲の公開に当たり、細かい施策も複数仕掛けました。その一つに「楽曲を使用した映像が累計30万回再生を達成したら、フルサイズ楽曲を公開&街頭広告を実施」という取り組みがあります。サビのダンス動画を用意し、キャラクターがさまざまな場所で踊る映像を、YouTubeショートやTikTokなどで定期的に公開するなどして、結果30万再生を達成し、街頭広告を解禁することができました。これらの動画は、最初に砂漠で踊っていたキャラクターが、進むにつれて街頭広告を出す新宿に近づいていく仕掛けにしました。視聴者の間で「次はどこで踊るんだろう?」「あのビジョンに出るんじゃないか?」といった考察や予想が生まれ、SNS上でも盛り上がっていたのが嬉しかったです。

『トキホリ』の今後の展開と展望について教えてください

直近では月1回くらいのペースでキャラソンをリリースしていく予定です。また、リアルイベントも実施予定です。皆さんに喜んでいただけるような展開にしますのでどうぞご期待下さい。
また、これはまだあくまで夢レベルですが、本作はメディアミックスプロジェクトなので、コミカライズ化や、ゲーム・アニメ・舞台などの展開ができればと願っています。ただ、これはファンの皆さんの応援があって初めて叶えられるものなので、多くの皆さんに愛されるプロジェクトとなるよう頑張ります。

『トキホリ』のファンや、これから好きになる方に一言お願いします

『トキホリ』を、皆さん一人一人が好きな形で楽しんで欲しいと思います。謎解きに没頭してもいいし、キャラクター同士の掛け合いを楽しむのもいいし、もちろん二次創作も大歓迎です。世に放った後のコンテンツは、全てファンの皆さんのものだと思っています。「こう楽しんでください」と押しつけるのではなく、好きに楽しんでいただけるのが一番嬉しくありがたいです。もし「こんな展開が欲しい」「こういうキャラが見たい」といった要望があれば、可能な範囲で叶えていきたいので、教えていただけると嬉しいですね。

作品の可能性を広げてくれるのは、ファンの皆さんの熱量です。私自身、「自分一人ではたどり着けなかった景色が、誰かと一緒だから見れた」という経験に何度も救われ、驚かされ、幸せにしていただいてきました。ですから、これからも、お互いに刺激を受け、ハッピーになれるコンテンツを作っていきたいと考えています。

OSZAR »